間違いなくTHE BEAT GARDEN史上最高にやんちゃを極めたステージだった。U、藤掛昌斗、渡部怜の3人でグループを結成した当初からいつか実現させたいと思い描き続けてきた“漢”祭りの夢がついに叶ったのだから、そりゃあもう、のっけからエンジン全開ではじけまくるはずとは思っていたが、まさか開始早々、ものの数分でメンバーが客席に飛び込んでいくなんて誰が予想しただろうか。いつにも増してアグレッシブなアジテーション、壇上のキャパシティを清々しいまでに考慮しないパワフルなパフォーマンス、昨年3月から5人体制となりボーカリスト4人を擁することになったグループの強みをフルに活かし切った全身全霊の歌唱とそれを支えるDJワークの妙、どれをとってもキレッキレで、観ているこちらの理性の箍(たが)まであっさり吹き飛ばしにかかるのだから、たまらない。
10回目のメジャーデビュー日を4日後に控えた7月23日、その大きな節目を祝うべく彼らが企画したFC限定ライブ“THE BEAT GARDEN FC ONE MAN LIVE 2026 「BOYS RIOT」”が東京・渋谷WWWにて開催された。冒頭に記したように今回のライブは“漢”祭り、すなわち、ふだんは体格差などに配慮して会場後方で楽しんでくれている心やさしき男性Beemer(※THE BEAT GARDENファンの呼称)に思いっきり前列で暴れてもらおうという彼ら初の試みだ。堂々とステージ最前のポジションに陣取る男性たちのなんとウキウキとした表情だろう。それを見守る女性Beemerたちも実に嬉しげで、ソールドアウトした会場に満ちるハッピーなムードがライブへの期待を否応なしに高めていく。
予定時刻を5分ほど回っただろうか、スタートを待ち侘びる焦れた空気がピークに達しかけたとき、場内がゆっくりと暗転した。耳をつんざくエッジィなEDMを登場SEに、真っ先に駆け込んできたのはDJのkowta2だ。続いて昌斗、怜が姿を現し、UとKAIがともにステージにやってくるとフロアのボルテージは早くも最高値をマークした。オープニングを飾ったのは「世界線〜ラブ☆ピース〜」。昨年リリースの最新アルバム『MADE IN DAMAGE』に収録、THE BEAT GARDENの楽曲のなかでも指折りのラウドなロックチューンがオーディエンスを容赦なく熱狂の坩堝に叩きこみ、そうして最初のサビに差し掛かるや否や、男性ファンのひしめくフロア前列に背中からダイブしたのがKAIだった。終演後にメンバーから聞いた話によれば、ダイブする予定ではあったもののタイミング的にはもっとあとの曲で、しかもKAIが飛ぶことにはなっていなかったという。本人は「いやもう、テンション上がっちゃって」と笑っていたが、周囲はさぞかし驚いただろう。さすがは漢祭り、予定調和ではなくリアルに衝き動かされた感情の発露こそがその醍醐味に違いない。いきなりのダイブにもかかわらず、がっしりとKAIの体を受け止めて支えた男性ファンたち存在も実に頼もしく、狂騒はもはや天井知らずの勢いだ。
前半のトピックはなんといっても新曲だろう。読めない女心に翻弄される男子の赤裸々な心情をコミカルに描いたポップソング「消しゴム」の曲終わりに電話のコール音、さらに「もしもし、新曲歌って?」とねだる女の子の声が流れると、それに応えるようにUが「新曲、歌うね」と告げ、初披露となるまっさらな新曲「Boy's don't cry」が投下されたのだ。頭サビから朗々と放たれるKAIのハイトーンボイス、ヴァースはU、昌斗、怜がラップで畳み掛け、サビではKAIとUによる絶妙なレンジのハーモニーが聴き手をどこまでも昂揚させるエモーショナルなニューアンセム。客席の反応も凄まじく、ステージの5人と一緒になって踊り跳ねては声を重ねるなど、これが初披露とはにわかに信じられないほどの盛り上がりを見せるのだから舌を巻く。わずか3曲目で早くも新曲が披露するメンバーの前のめり加減もかなりのものだが、速攻でノれてしまうオーディエンスの熱量も尋常ではない。いや、むしろ、必ずや受け止めてくれるという絶対的なファンへの信頼があってこそのこの曲順か。
「今日は“漢”祭り、女性は男勝り、一緒に行こうぜ!」
Uの掛け声を合図に、新曲披露の興奮も冷めやらぬまま突入した「ラブコメディ」ではなんとゴムボートが登場。フロアの男性ゾーンに投げ入れられたかと思うと、そこにkowta2が乗り込み、運動会の大玉送りよろしく右へ左へと運ばれる一幕も。無事、ステージに戻ったのも束の間、今度は昌斗とダブルでまたも客席に身を投じるという荒技を繰り出して、ファンを歓喜させる。また、客席いっぱいにスマホのライトが揺れた「フレンズ」では曲中、「一緒に写ろうぜ」とUの呼びかけでkowta2がスマホのカメラを掲げ、メンバーと客席を自撮りする場面もあった。“語り明かしたフレンズ/馬鹿騒ぎしたフレンズ/カメラロールもダメな僕も/どれも隣は君だらけ”とKAIが歌うフレーズのあと全員で「イェー!」カシャ!と切り取られた光景のなんとかけがえのないことか。ちなみにライブタイトルに冠された“RIOT”には一般的に訳される“暴動”や“騒動”のほかに、“(感情などの)ほとばしり”や“とてもおもしろいもの”といった意味もあるのだが、ただ暴れればOKではない、もっと深いところで繋がり、喜びや楽しさを共有し合えるライブこそが彼らの目指す“RIOT”なのだろう。MCで「誰の真似でもない、THE BEAT GARDENにしかできない漢祭りを作りたい」と意気込みを口にしていたU、その見事な具現がここにはあった。
愛と科学がケミストリーした温かなラブソング「エレメント」からステージも客席もガンガンにタオルをぶん回した「JUNGLE GAME」への鮮やかなコントラストがまたニクい。前者は今年3月にリリースの最新シングル曲、後者はインディーズ時代にリリースされた1stアルバムに収録のアッパーチューンだが、最新と原点とを立て続けに並べてまったく違和感のない表現力、どちらのベクトルでも等しく観る者を強力に惹き込む彼らの磁力に目をみはる。けっしてなだらかではなかったこれまでの道のり、人生山あり谷ありを身をもって知らされながら、その急勾配で精神的な足腰を鍛え、日々たゆまず研鑽を重ねてきた先に今のTHE BEAT GARDENがいるのだとつくづく実感して目頭が熱くなる。KAI、kowta2という新たな仲間を迎えて1年半あまり、いっそう自由に伸びやかに自身の音楽を紡ぎ、体現する彼らの姿が希望でないなら何だろう。続く「メッセージ」に宿った嘘のない想い、“泣きじゃくった瞳にしか映らない/未来がきっとあるはずだから”のフレーズがことさら胸に刺さって抜けない。
「久しぶりのワンマンライブ、楽しいね。僕らもたくさん音楽を聴いたり、ライブを観に行ったりするんだけど、こうしてTHE BEAT GARDENだけを目掛けてみなさんが集まってくれるという凄さ、ありがたさを改めて感じています」
本編終盤に差し掛かってのMCで噛み締めるようにUが感謝を口にする。“漢”祭りの開催にあたって「本当に成立するのか」とスタッフからは懸念の声も上がっていたことを告白し、それでもできると信じていたと笑顔を浮かべるU。こうして念願を叶えられたのは、ここまでずっと支えてくれた女性のみなさんのおかげであり、一緒に見届けてほしい気持ちから、あえて男性限定にはしなかったのだという。そして前列エリアで体を張って彼らを盛り上げてくれている男性ファンたちに向け「みなさん本当に紳士だし、強くてやさしい人たちばかり。ミュージシャンとファンが鏡なのだとしたら、俺らはきっとダサくないんだろうなって今日のみなさんを観て思いました」とUらしい言い回しで賛辞を贈る。
「今でもたくさん反対されることはあるし、なりたい自分になれるのかって自分でも思うし、相変わらず迷って負けてる歌ばかり歌っているけど、そんな俺らがなんで10周年を迎えられたかと言えば、来週あなたと会えるから、あと数日であなたに歌えるからっていう、その想いしかなくて。たぶんこれからも俺らはかっこ悪いし、みんなにも“こいつら、また転ぶんだろうな”って思われるかもしれない。でも、そのときはよかったら支えてください。あなたの人生にいちばん寄り添いたいアーティストはTHE BEAT GARDENです」
客席全体を見渡してそう言葉を続けたUに満場の拍手が降り注ぎ、なだれ込んだ「本当の声で」で巻き起こった大合唱が一体感を底上げする。5人体制になって初めて世に出された記念すべきシングル曲「Happy Ender」では怜の切れ味鋭いラップが炸裂。オーディエンスとの掛け合いも、メンバーの合いの手も阿吽の呼吸でぴったりとハマって実に痛快だ。本編ラストを飾ったのはやはり「Start Over」だった。韓国のシンガーソングライター・Gahoの楽曲をUによるオリジナルの日本語詞でカバー、テレビ朝日系木曜ドラマ『六本木クラス』挿入歌として話題を呼び、THE BEAT GARDENの名を広く世に知らしめたブレイクスルーの1曲に客席が沸き立たないはずがない。果てしなく膨張する熱、咆哮にも似たシンガロングの渦のなか、完全にリミッターを外した昌斗はまたしても客席に飛び込むのだった。
「みんなホンマに元気すぎる! この日のために走って走って走ってきたけど、追いつきませんでした(笑)。今日は僕らの念願を叶えてくれて、そしてこの10年、歌い続けさせてくれて本当にありがとうございます。これからもみんなで一緒に20年30年とたどり着かせてもらえたら嬉しい」(昌斗)
「一つのことを10年やり続けるって案外難しいんです。好きなことでも壁にぶち当たったり、ひとりじゃ乗り越えられない瞬間もあったけど、メンバーにもすごく助けてもらったし、みんなのおかげでここまで来れました。まだ始まったばかりの10年、この段階で僕らを見つけてくれてありがとう。ここから一緒にさらに歩んでいけたら」(怜)
「こんなに安心して身を委ねられる場所はここしかないなと感じました。10年という大事な節目にこうして合流できたこと、チームのみんなと一緒に音楽できるのが本当に奇跡みたいです。ここから僕も追いついて20年30年、みんなと一緒にたくさん奇跡を起こしていきたいので、よろしくお願いします」(KAI)
「ここだけの話、さっきのDJはめっちゃ緊張しました(笑)。そう見えなかったとしたら、それはみんなのおかげです。本当にBeemerに感謝します!」(kowta2)
「男性Beemerがこんなに喜んでくれて、女の子Beemerもすごく嬉しそうに観てくれて、一緒に叶えたって今日の日のことを言うんだなって思いました。これからも、もっともっと仲間を増やして、日本武道館、東京ドームを目指していけたら。これは“やるか/やらないか”じゃなく、“やるか/やるか/やるか”だからね。また全員で“BOYS RIOT”、“GIRLS RIOT”もやりましょう。10周年、本当にありがとう!」(U)
kowta2が魅せる華麗なDJプレイを挟み、真っ赤に染まったステージがなんとも扇情的な「BAD THE BIGHT」からスタートしたアンコール。MCではメンバー全員がそれぞれの想いをファンに手渡した。そして「さっきはいきなりでびっくりしたと思うので、もう一回、新曲をやっていいですか?」と「Boy's don't cry」の再披露も。しかも先ほどはショートバージョンだったこと、本当はラストにバラードが加わることが明かされたのだから驚きだ。事実、攻め込んだアッパーなパートから立て続けに昌斗がギターを掻き鳴らし、ガラリと展開が切り替わるユニークな構成のフルバージョンを聴けば、まるで印象が変わる。バラードによってグッとラブソングの色合いが濃くなり、世界観が一気にスケールアップするのも面白い。THE BEAT GARDENの新たな挑戦、次なるフェーズの到来を予感させるエポックメイクな1曲にいっそう心が躍る。
オーラスは「Never End」で大団円。メンバーが口々に語った“これから”“20年30年”がたしかな未来であることをここではっきりと確信する。ファンと一緒にどこまでも切り拓いていくTHE BEAT GARDENの道ゆき、ゴールなんてなくたっていい。今を分かち合い、積み重ねた先に広がる景色をともに見続けていたい。
「ここからのTHE BEAT GARDEN、思いっきりいきますので。これからも変わらない距離で会いましょう」
5人が横並びで手を繋ぎ、バンザイをして深く一礼。感動のエンデイングかと思いきや次々にフロアへとダイブを決めるメンバーにファンは大喜びだ。最後の最後までやんちゃを貫き通した“BOYS RIOT”、もはや「最高」以外の言葉が出ない。10周年のメジャーデビュー日である7月27日にはこの日披露された「Boy's don't cry」を配信リリース、9月からは全国ツアー“THE BEAT GARDEN one man live tour 2026「NITRO POP」”も控えるTHE BEAT GARDEN。次はどんな彼らに会えるだろうか。
文・本間夕子