3人体制でのラストライブ! 新たな時代の幕開けを確信させたツアーファイナルをレポート!

2024.12.27

 これはもう希望しかない。心の底からそう思えた、会心のステージだった。10月に大阪、11月は名古屋と、ひと月につき1公演、3ヵ月に渡って開催された東名阪ツアー“THE BEAT GARDEN one man live tour 2024「FORTE」”、そのファイナルとして12月24日に開催された東京・Spotify O-EAST公演は彼らが歩んできたこれまでの集大成であり、この先に待つまばゆい未来への予告編だったと断言したい。

 このファイナルに先立ち、名古屋公演のステージ上で2025年から新たに2人のメンバーを加えて5人体制で活動していくことを発表したTHE BEAT GARDEN。2021年からサポートDJとしてグループを支えてきたkowta2が正式メンバーになることは少なからず予想できたが、さらにボーカリストが1名加入するとは想像だにしていなかった人がほとんどではないだろうか。彼ら自身も望外の出会いだったとオフィシャルコメントの中で明かしているくらいだから当然だ。もとより、それが前向きな決断であることは疑う余地もないが、どこか複雑な気持ちを抱いてしまったとしても致し方ないことではあろうと思う。ともあれ、3人体制で臨むTHE BEAT GARDENのステージはこのファイナルが文字通りの最後。果たして彼らは我々に何を届けてくれるのか。

 クリスマスイブとあって場内に流れるBGMもクリスマスソング一択だ。その効果もあるのか、客席のムードも思っていた以上に明るくワクワクとした期待感に満ちている。THE BEAT GARDENがO-EASTに立つのは昨年10月の“ONE MAN LIVE TOUR「Bells.」”ツアーファイナル以来だが、フロアの人口密度は明らかに高い。そうして開演時刻と同時にBGMがパニック!アット・ザ・ディスコの「High Hopes」に切り替わり、客電が落ちた。

 凄まじい歓声に迎えられて彼らが姿を現すや、一気に沸騰する空間。オープナーとなったのはインディーズ時代から熱狂を司ってきた「B.E.T」だ。3人の気迫もこの上なく、Uは「踊ってくれ!」「跳べ!」とのっけから容赦なく煽り、MASATOはステージを弾丸のように歌い跳ねる。REIが担当するクールな英語詞パートも切れ味鋭く、たちまち熱狂が加速する。そのまま「High Again」に突入しすると、いきなりフロアに飛び降りるMASATO。ステージに留まってはいたもののUもREIも自身のギアをすでにトップに入れているのは、それぞれの前のめりなステージングからひしひしと伝わってくる。自分たちの発表によってファンが抱えた不安や戸惑いを知っているからこそ、いつにも増して全力のパフォーマンスと歌唱でそれを払拭したい、自分たちの本気を全身で証明したい、そんな覚悟と願いが一挙手一投足に込められているようにも思える。曲のエンディングでようやくMASATOは2人のもとに戻ったが、まだまだ暴れ足りないとでも言わんばかりにさらにエレキギターまで掻き鳴らしてみせたのだから痛快だ。


  • forte



 その後も「花火」「Start Over」とライブでも鉄板の人気曲を序盤から惜しげもなく披露して、いきなりクライマックスみたいな盛り上がりを生み出す一方で、「present」「ラブレター」といった柔らかなバラードを朗々と響かせてボーカルグループの本領を存分に発揮。特に「ラブレター」にはファンへの想いがたっぷりと詰め込まれており、その誠実で温かい歌声はオーディエンスを包み込むブランケットをふと連想させた。

 「今日は最初から飛ばしてますけど、まだまだ皆さん、踊れますか?」とUが呼びかけてなだれ込んだのはなんと「ダンシング・マン」! この曲がセットリストに並ぶのは3人体制になってから今ツアーが初ではないだろうか。THE BEAT GARDEN屈指のおバカソングにして聴く人を必ずやハッピーにする最強のディスコチューンにステージもフロアも一体となって会場を揺らしに揺らす幸せたるや。間奏パートではkowta2もステージ前方に躍り出て、華麗なブレイキンを披露。こんな凄技まで隠し持っていようとは、新メンバーとしての来年以降がますます楽しみになるではないか。

  • forte



 REIがキーボードを、kowta2がシンセパッドをそれぞれ演奏して狂騒に拍車をかけた「Don't think, feel」では、またもMASATOがフロアに降り立ち、肩車されながら黄色い声の間を進撃する一幕も。UはUで、こちらも客席に飛び降りて至近距離でオーディエンスを沸かせ、残ったREIはステージ独占、いっそう奔放にその肉体を躍動させるという、3人3様の立体的なフォーメーションで昂揚を天井知らずに押し上げていく。しかも、こんなにド派手に動き回りながら、誰一人として歌声がまるでぶれないことに目をみはった。ここまでくるのにどれほどの努力と研鑽を積み重ねてきたことだろう。REIのキーボードとkowta2のシンセパッドに今度はMASATOのギターも加わったシティポップテイストなインストセッションから「サイドディッシュ」への洒脱な展開も実に心地よく、渦巻くファンキーなグルーブに刹那、O-EASTがダンスホールと化していく。

  • forte


  • forte



「上京して10年以上が経ちました」

 後半戦に差し掛かったMCで、そう切り出したU。12年前に結成した当初は歌詞も曲もまともに書いたことがなく、ただ勢いだけで上京してきたこと。路上ライブをやっても誰も立ち止まってくれず、その帰り道に立ち寄ったハンバーガーショップで各自の飲み物を買い、バーガーセット一つを分け合ったこと。そのときに、もし2年で芽が出なかったら3人でまた違うことをやろうと話していたこと——彼らのなかで今なお鮮明な思い出をゆっくりと噛み締めながら口にする。

「何がなんでも音楽を続けようなんて言えるかっこいいグループではなかったと思います。あなたがどこかで見つけてくれて、こうして会いにきてくれて、だから俺らは10年以上も歌えています。10年歌ってきて1回も3人だけでやってるなんて思ったことない。いつも誰かがいてくれたから、やってこれました」

 感謝を告げるその言葉はかすかに涙ぐんで聞こえたが、すぐに「こういうMC、もっとデカい会場でかっこよく言いたかったんだけど、ちょっと後ろ倒しになってます」と冗談めかすのがUらしい。「でも、その予定はここから絶対に叶えるので」と誓いを新たにすると「俺らもなんとか続けてきたけど、あなたもたくさんしんどいことがあるのに自分を続けてきてくれてありがとう。だから出会えたあなたにこの歌を」と続け、そうして一人ひとりに手渡された「わたし」が沁みて沁みて仕方がない。“わたしはわたしを続けてよかった”“幸せは他の誰でも無い/わたしの中で生まれるの”——迷い、悩み、時に何かを失って、幾度となく心折られそうになりながらも、それでも前を向くことを諦められなかった3人でなければ歌えない歌。

 それは上京してもなかなか思い通りに進まない日々、鬱屈した心象に当時の渋谷の風景を重ねて赤裸々に綴った「光」や、“描いた未来と もがいた今が/交わる場所できっと夢は待っている”と己に言い聞かせ、奮い立たせるようにして歌い上げる「本当の声で」もそう。生き様なんてキザな言葉で飾らない、生身を絞るようにして放たれるメッセージにどれだけ励まされ、救われてきたことか。だからこそ、そんな彼らが決意した未来ならどこまでだってついていける。3層の声の重なり、凛としたそのハーモニーに確信した。

  • forte


「12年やってきて、マジで続けることの難しさを感じました。続けるコツとか12年経っても全然わからないですし。でも、どんな状況になっても続けてこられたのは紛れもなくみんなのおかげ。新メンバーと出会えたのも今日までみんなが続けさせてくれたから、みんなが出会わせてくれた2人だと思っています。応援して良かったなと思ってもらえる最高のTHE BEAT GARDENになって、みんなと一緒にいい夢を叶えていきたい。これからも一生よろしくお願いします!」(MASATO)

「これまで10年以上一緒に歩んでくれたみんながいて、一人ひとりの想いとか(THE BEAT GARDENに)懸けてくれた時間とか、そういうものを全部背負って決断しました。僕たちは夢を叶えるために新しい仲間を迎えます。みんなに納得してもらえる新体制にするので、また遊びに来てください」(REI)

「今日は改めてありがとう。ヒヤヒヤさせたり、ドキドキさせたりすると思うけど、これからも冒険と挑戦をして行きます」(U)

 アンコールに応えて再び登場した3人は自分の言葉で気持ちを告げた。嘘偽りのない力強いその想いはその場にいた全員のど真ん中にまっすぐに届いたに違いない。不安や戸惑いなど今や跡形もなく消え去ったようだ。

 「じゃあ、東京のアンコールはガラッとセットリストを変えて。今日はクリスマスなのでこの曲を」

 クリスマスカラーのライティングに照らされたステージから流れ出した「Snow White Girl」にフロアが歓喜する。ミラーボールがキラキラと散らす光のかけらは雪のごとく美しい。“泣きじゃくった瞳にしか映らない/未来があるはずだから”と歌詞に込めた想いを全身全霊で放った「メッセージ」にも胸が沸き立つ。そうしてついに迎えたオーラスの1曲はTHE BEAT GARDENのデビュー曲にしてけっして終わらない彼らの物語、「Never End」だった。進化を求めて変化を恐れず、けれど初心はいつまでも忘れない。そんな彼らの姿勢は新体制をとなってもきっと変わることはないだろう。だからやっぱり希望しかない。

  • forte


  • forte


「ありがとうございました! THE BEAT GARDENでした!」

 互いに肩を組み、揃って生声で叫んだ屈託ない笑顔、去り難そうで、けれど怯まずこのステージの先へとを踏み出していく3人のたしかな足取りに、来たる2025年を思う。3月26日には約5年ぶりにニューシングルがCDリリースされること、それにともなってリリースイベントを全国10箇所で開催することがこの日、彼ら本人からアナウンスされた。さらにその先駆けとして、2月17日には東京・渋谷WWWにて新体制のお披露目ライブもファンクラブ会員限定で実施される。THE BEAT GARDENの新たな時代の幕開けを見逃すわけにはいかないだろう。

文・本間夕子
写真・toya