The Beat Garden ONE MAN LIVE 「THE NEST 2021」東京ファイナル オフィシャルライブレポート

2022.01.11



 彼らにとって、彼らが“Beemer”と親愛を込めて呼ぶすべてのファンたちにとって、いつでも“帰ってこれる場所”であり、また、笑顔で次の一歩を踏み出す場所であってほしいという願いを込めて名付けられたワンマンライブ“THE NEST”。2019年10月の愛知・DAIAMOND HALL公演をスタートに、2020年1月には2回目にしてグループ史上最大規模となった東京・新木場 STUDIO COAST公演を開催、そうしてこの12月、大阪・梅田CLUB QUATTRO、東京・渋谷CLUB QUATTROの二会場にて行われた“THE NEST 2021”で第3回を数えたわけだが、今回ほどそのタイトルに託された意味を強く噛み締めたステージもなかっただろう。第2回の「THE NEST 2020」IN TOKYO〜新木場 STUDIO COAST〜」直後、世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症によって、音楽業界にも例外なく逆風は吹きつけ、ありとあらゆるコンサート、ライブ、イベントの開催が中止されては、その先の見通しすら立てることができなくなった2020年。当たり前がこんなにも突然、当たり前でなくなってしまうなんて誰が想像しただろうか。アーティストやミュージシャンのみならず、そのファンやリスナーも行き場のなさを抱えながら日々、塞ぐ想いと闘ってきたはずだ。もちろんTHE BEAT GARDENも、Beemer一人ひとりも。

 活動がままならない状況の中でもコンスタントに配信シングルをリリースし、さらにはSNSなどの発信ツールや配信ライブを通じて彼らなりのやり方で音楽を世に届け続けてきたTHE BEAT GARDEN。葛藤も逡巡もしただろう、それでもブレずに自らの意志を貫き通す姿勢はきっとたくさんの人々を励ましたに違いない。2021年に入ると、4作目の配信シングル「遠距離恋愛」を皮切りに8月には約2年5ヶ月ぶりとなるオリジナル3rdアルバム『余光』をリリース、それに先駆ける形で13ヵ所26公演(2部制の1日2回公演)に及ぶ全国ツアー“The Beat Garden one man live tour 2021「Afterglow」”を敢行して大成功を収めたことは記憶に新しい。活動が次第に活発化する一方、DJを担ってきたメンバー、SATORUの卒業という大きな決断もあった。グループにとって最大の転機を迎えたTHE BEAT GARDENだったが、それでも彼らはその歩みを止めることなく、新体制となった自分たちをより身近に感じてもらおうと待望のファンクラブ“ウラ庭”を発足、さらなる進化をBeemerに誓ったのだ。そんな、ある意味変革期とも呼ぶべき彼らの2021年を“THE NEST 2021”が締めくくる。両会場ともにソールドアウト、12月24日の大阪公演を大団円で終えてメンバーの気合いもBeemerの期待も最上級に高まるなか、いよいよ開くファイナルの幕。暮れも押し迫った12月28日、会場の渋谷CLUB QUATTROは1部も2部も全国各地から詰めかけたオーディエンスの熱気に満たされて今が冬であることを束の間、忘れてしまうほどだった。

【1部開幕】
 小康状態を保っているとはいえ、コロナ禍は依然、収束には至っておらず、変異ウイルス・オミクロン株の脅威も囁かれる中での開催とあって観客同士、一定の間隔が保たれるよう床には一人ひとりの立ち位置がテープによって区切られ、また、マスク着用は必須の上、ライブ中の発声や歌唱、タオルを回す行為も禁止されるなど感染予防対策が徹底された場内。だが、待ち侘びた想いはどうしたって空気に滲む。SATORUの卒業後、初のワンマンライブとなる“THE NEST 2021”ゆえ、どこか複雑な感情を携えてここまでやってきたBeemerも少なからずいるだろうと思っていたが、ネガティブな空気は不思議なくらい感じなかった。このあとのMCで「変な緊張感があるのかなと思ったけど、ないですね。みんなのウキウキがすごい伝わってくる」とUも語った通り、感じるのは圧倒的に純度の高いウキウキとワクワクだけだ。

 開演時刻と同時に刹那、BGMのボリュームが上がり、そして客電とともにゆっくりフェイドアウトする。青く染まり、真っ白な光を放つステージ。鳴り渡るオープニングSEにオーディエンスのクラップが重なるや、REI、MASATO、Uの3人がこれ以上ないくらいの笑顔をたたえて現れた。Beemerとの久々の再会が嬉しくてたまらないといった表情だ。「いこうか、東京!」とUの掛け声一発、たちどころに爆発する躍動感。東京公演最初の1曲は「Never End」が飾った。言わずと知れたTHE BEAT GARDENのメジャーデビュー曲であり、彼らのライブに欠かせない鉄板中の鉄板のチューン、ライブタイトルとも相まって帰ってきた感が尋常じゃない。そう、これをずっと求めていたんだ。おそらく3人も同じ気持ちでいるのだろう、まだ1部の1曲目だというのに後のことなどお構いなし、心のまま、ほとばしる感情のままに全力でステージを跳ね回り、歌声を轟かせるその勇姿たるや。フロアの一人ひとりに視線を投げ、手振りでもっと来いよと誘っては、持ち場なんか知ったこっちゃないと言わんばかりにフォーメーションを変えていく彼ら。追いかけるこちらの目が間に合わないほどの激しさで、Beemerのテンションをのっけから爆上げしにかかるのだから堪らない。興奮冷めやらぬオーディエンスに続けて贈られたのは「花火」だ。“君が好き”のキラーフレーズから始まる、THE BEAT GARDENきっての片想いソングが甘酸っぱく耳の奥をくすぐる。向かい合ったREIとMASATOが“もう運命も偶然も僕の事を”“嫌いかもしれない それでも”とDメロの各パートを歌いあげ、その後に“僕には”と声を重ねたあと、間髪入れずに立ち上るUの“君しか”のフレーズ。そこに宿ったパワフルな昂揚と、直後、静かなピアノの旋律を挟んでの“いないから”と呟くようなトーンとのコントラストにグッと胸を掴まれてしまう。楽曲の世界観がこうして立体的に膨らむのは3人の緻密な声の連携があってこそ、ライブではそれがいっそう際立つのだ。

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「“THE NEST 2021”お越しのみなさん、THE BEAT GARDENです! 楽しんでますか?」

 Uがそう問いかけるとフロアが割れんばかりの拍手に沸く。「いいね! マメができちゃうからほどほどにね。でも今日は拍手がみんなの声の代わりなので、そうやって伝えてくれたらすごく嬉しいです」と相好を崩すU。MASATOもREIも、サポートDJを務めるkowta2もニコニコと愛しそうにフロアを見つめている。「声が出せないっていうルールはあるけど、気にしすぎて楽しめなかったら本末転倒だからね。じゃあテンポ良く、一緒に体を動かしてみよう!」というUの呼びかけから曲は「answer」に突入。ダンサブルなトラックに熱狂するBeemerの火に「東京、そんなもんちゃうやろ!」とREIがさらに油を注ぎまくり、MASATOも扇情的な視線で煽れば、フロアは瞬く間にダンスホールの様相に。とりわけ白眉だったのは彼らの楽曲と彼らが好きな楽曲とをマッシュアップした「THE BEAT GARDEN Original Mash Up Tokyo Ver.」だろう。コロナ禍でライブができない時期に自身のYouTubeチャンネルで数々のマッシュアップを投稿してきたTHE BEAT GARDEN。まさか生で堪能できようとは思わなかった。「ROMANCE」リリース時のオフィシャルインタビューで“THE NEST 2021”への意気込みを訊ねた際、今回はいつもと違うコーナーを設けているとUが明かしてくれたが、このことだったのか。満を持して披露されたそれは、まさしくボーカルグループの面目躍如、加えてトラックメイカー・REIの手腕が存分に発揮された、音のタペストリーとも呼びたいスペクタクルな大作だった。THE BEAT GARDENの楽曲からピックアップされた「Fly Me High」「FIRE」「花火」「夏の終わり 友達の終わり」「Konayuki」「Snow White Girl」を縦糸とするなら、横糸は藤井風、久保田利伸といった錚々たるアーティストの名曲たち、それらを絶妙に紡ぎ上げて新しい音像を生み出していく彼らのセンスと歌の力に舌を巻く。同時にこの人たちは本当に音楽が、歌が、大好きなんだなとみぞおちがポッと暖かくなるような喜びも覚えた。その“大好き”をこうして分かち合おうとしてくれているのが何より嬉しい。愛情とリスペクトがなければこれは絶対に成立しない離れ業だ。

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 回るミラーボールの下、80年代90年代を彷彿させるディスコティックなサウンドでオーディエンスを心地よく揺らした新曲「ROMANCE」のあと、Uは真摯な面持ちで「今年もあと少し、みんなはどんな1年を過ごしましたか? きっといろんなことがあったんじゃないかな」と問いかけると自らを振り返って「僕らは別れと出会の一年でした」と言葉を続けた。SATORUの卒業をまだ受け入れられず寂しいという声が今も届き続けていることを明かし、「でも、それでいいと思う。苦しいことを無理に受け入れなくていい。素直に伝えてくれてありがとう。こういう関係でいられることが僕は嬉しいです」と感謝を口にする。U自身もこの1年、不安になったり怖くなったり、頑張っても全部が報われるわけではない現実を思い知らされたりしたという。それでも、この一回きりの音楽人生をやめようとは思わなかったこと、前を向いて歩いて行こうと思えたのは、みんなのおかげだと告げ、「こうして、たくさんのみんなが集まってくれると、もしかしたら私ひとりぐらいいなくてもいいんじゃないかって思わせてしまうかもしれない。信じてもらえるかわからないけど。あなたたち一人ひとりが今いてくれるから今日まで歌うことができています」ときっぱり言い切った。それはMASATOもREIも同じだろう。さまざまな事情で来れなかったBeemer一人ひとりのことをも想い、歌われた「みんなへ」が今日は一段と力強い。それに応えるかのようにフロアが一丸となって奏でるクラップの音色に支えられた「スタートボタン」、歌詞の“何度負けても それでも/生きることを選んで/今日を迎えた僕ら”とは間違いなく、この日、この場にいた彼らとBeemerのことだと思えた。みんなでここからまた新たにスタートボタンを押そう、そんなタフな宣言にも聴こえる。

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「みんな、歌いたいよな。ありがとう、ルールを守ってくれて。また絶対に歌える日が来るよ。来年も嬉しい未来を持ってみんなのことを待ってるから、その未来に一緒に行こう。今日は俺らが代わりに歌うから、みんなは心で思いっきり歌ってくれ」

 そうUが言ってドロップされた「ぬくもり」で再び躍動を牽引し、ラストの「Sky Drive」で全身全霊のパフォーマンスを捧げた3人。

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 新体制になったTHE BEAT GARDENははたして変わっているのか、それとも変わらないのか——ライブが始まるまでは、そんなことを考えてはでない答えに思いを巡らせたりもしていたが、1部を観終えた今となってはそのどちらでもなかった彼らの在りようが腑に落ちる。変わるか変わらないかではない。進化していくだけなのだ、THE BEAT GARDENはきっと。だから迷わず、ともに歩いていけばいい。来年前半はまだリリースイベントを行うのは難しそうだけど、それに変わる大きな何かを用意しているからと約束を残して、去り難そうにステージを降りていった彼らの背中を見送りながら、そう思った。


【2部開幕】
 青く染まったステージとまっすぐに放たれる真っ白なライトは1部と同様、しかしオープニングSEが流れ出した途端に目をみはってしまった。これ、さっきと全然違う! 1部のSEをきらめくパッションとするなら、2部のこちらは柔らかにたおやかに流れる悠久の川面を思わせる。のちのMCで明かされたところによれば、マッシュアップのみならず、このふたつのオープニングSEもREIが手掛けたという。それだけでこの久々の「THE NEST」に懸ける彼らの意気込みが生半可でないことが伝わってくる。登場した全員、kowta2も含めて衣装も1部とは異なり、オフィシャルインタビューでも明言していたようにセットリストもガラリと変わって、2部は「マリッジソング」からポップかつブライトなスタートを切った。それにしても、なんという声量だろう。あれほどに全力全開のライブをやり切ってなお嗄れないどころか、いっそう艶やかさを増したようにさえ聴こえる歌声に彼らのたゆまぬ研鑽を知る。ライブができずにいる間もずっと、こうして会える日を信じて互いに切磋琢磨を重ねてきたに違いない。太くうねるシンセベースが特徴的な「Everglow」の軽快な横ノリサウンドにもただノるだけでなく、しっかりと楔を打ち込み、楽曲全体をさらにグルーヴィーに仕上げる存在感ある歌とハーモニー。REIのラップも小気味よく、コロナ禍の鬱憤をスタイリッシュに昇華させながらもニューノーマル時代にカウンターを喰らわせんとする気概が聴く者をも奮い立たせるかのようだ。

「“THE NEST 2021”東京ファイナル、お越しいただいてありがとうございます。制限はありますけど、楽しむことに制限はないので。だって今日までみんな、頑張ってきたんでしょ? だったら遠慮するなよ。自分の場所で思いっきり踊ってもらって大丈夫だから」

 Uの言葉をBeemerに体現させるべく次の曲は「Don't think,feel」。考えるな、感じろというメッセージに突き動かされてフロアが俄然、揺れ出した。安全に配慮しながらでもめいっぱい盛り上がることはできるのだ。ダイナミックにステージを行き交いながら、Beemerのはじける笑顔に笑顔で応える3人。kowta2の堂に入ったスクラッチプレイも興奮をいっそう加速させる。

「やばたにえんですね、やばたにってます」とライブの楽しさをUが独特の言い回しで表現すれば、REIも「ライブって何にも変え難いもの。会いたかったBeemerが目の前にいて、僕らと音楽を通じて心を交わして、それがライブになって、一体感になるわけでしょ? なんて素晴らしいことだろうって改めて感じてます。年内にできるかどうかわからない時期もあったけど、無事発表できて、こうやって開催できて。幸せな時間だなって改めて思ったので、あとは一緒に楽しみましょう!」といつになく長めの言葉で素直な想いをオーディエンスに届ける。REI曰く今回の“THE NEST 2021”では個人的に“いつもよりちょっと長くしゃべるキャンペーン”をやっていたらしい。MASATOはMASATOで、とにかく自分語りをし倒すという独自のスタイルでもって2部では自分の汗かきをネタにして(1部ではインスタグラムのストーリー機能だった)Beemerを大いに沸かせる。kowta2も一緒になって和気あいあい、まるで気取らないメンバーの素顔をたっぷり垣間見られるのもライブならではの醍醐味だろう。

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 1部にてオーディエンスを刮目させた「THE BEAT GARDEN Original Mash Up Tokyo Ver.」はもちろん2部でも披露された。聴けば聴くほど本当に見事な構築っぷりだ。自分たちの楽曲は当然ながら、DISH//やBTS、YOASOBIにLiSAとタイプの異なるボーカリストたちの楽曲をしっかりと咀嚼し、単なるカバーメドレーではないマッシュアップというひとつの作品に仕立てるというのは楽しい作業である一方で、きっと並大抵のことではないだろう。「Fly Me High」に始まり、「Fly Me High」に終わったこのマッシュアップ。1部ではスルーしてしまったが、締めのパートにサビを用いつつも、その中に“Oh Oh Oh/いつか同じ街で Go Go Go/過ごす日描いて”という別の箇所のフレーズを差し挟むという洒落た技が施されていることに、2部になって気づかされた。さしずめ、自曲内マッシュアップと言ったところだろうか。これまたニクいことをしてくれる。

 新曲「ROMANCE」も1部に続いて披露、片想いから一歩前に踏み出そうとするリアルな恋模様と80年代90年代のニュアンスを孕んだトラックとのマッチングはやはり秀逸だ。かの時代のトレンディ感を宿らせるべくこだわったというサビの“いま”というフレーズ、そのアクセントの置き方といい、ライブでここまで映えるものだとは。楽曲とはリリースして終わりではなく、ライブという場で演奏されて初めて完成するのだとよく耳にするが、今回の“THE NEST 2021”ではまさしくそれを実感する瞬間がとても多い気がする。おそらく表現者としてのTHE BEAT GARDENの本領はライブでこそ発揮されるのだろう。Beemerという大切な人たちに手渡すことができて初めて、彼らの楽曲は真の輝きを放てるのかもしれない。

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「この1〜2年、価値観とか大事にしてるものとか考え方とか、それぞれの違いに気づかされることが多かったし、勝手に悲しい距離感を感じてしまったりもして。でも距離を感じるほど想いは強く濃くなって、俺はもっとみんなともっと深く繋がりたいんだなって再認識しました。もしも音楽がなかったとしても、食べるものや住むところ、仕事があれば人間は生きていけるんだなって感じたとき、自分たちの歌う意味を失いかけたりもしたんだけど、でも、この曲を書いていて浮かぶのはみんなのことばかりで。そのみんなが今、目の前にいてくれて、歌っててよかった、この曲を書いてよかったって思いました」

 そんなUの想いを乗せた「遠距離恋愛」がオーディエンスを包み込む。物理的にも精神的にも人と人の距離を遠く希薄にさせたコロナ禍。人はこんなにも簡単に孤独の中に放り出されてしまう事実と否が応でも突きつけられた。でも人と人との繋がりは、脆くて儚いからこそ尊く、決して失いたくないものだということにも改めて気づけたのではないだろうか。丁寧に歌い紡がれる歌詞と旋律に耳を傾けながら、そんなことを思わされる。ダメなときがあったっていい、あなたがあなたでいてくれることが僕の歌う理由なんだと目の前の一人ひとりを抱きしめるようにして歌われた「あのね」の染み入るようなやさしさと、葛藤と逡巡にまみれながらもけっして枯れない本当の想いを歌い上げた「本当の声で」のしぶとさとたくましさ。THE BEAT GARDENの歌に心震えるのは、その一つひとつに彼らの生き様が宿っているからなんだろう。格好よくなくても構わない、大事なものは何があっても手放さないという覚悟と言い換えてもいい。だからコロナ禍という未曾有の非常事態にあってもその軸はブレることなく、私たちを鼓舞するのだ。

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 “THE NEST 2021”の幕は「BAD THE NIGHT」でついに閉じられた。インディーズ時代の1stフルアルバム『WILL』に収録された楽曲をエンディングに選んだ意図はなんだろうか。理由はなんであれ、容赦なく撒き散らす初期衝動的エネルギー、遮二無二な疾走感は痛快の一語に尽きた。原点回帰、そして次へ。“巣”と、“次の始まり”を意味する“NEXT START”の頭文字をつなげた造語でもある“NEST”を具現する選曲だとも言えるかもしれない。ザンザンと打ち鳴らされるBeemerのクラップが、次のスタートラインに立ったTHE BEAT GARDENへの祝砲にも聴こえる。ステージとフロアを結ぶ固い絆、すなわち互いへの途方もない愛情と、限りない信頼、そして尽きることのない希望。目に見えなくとも、生身の想いが炸裂し合うライブハウスというこの空間に確かにそれはあった。少なくともそう信じられた。

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 恩返ししたい人が本当にいっぱいいると最後の最後にUは言った。事務所、レーベル、ライブのスタッフ、そして何よりこうしてライブに足を運んでくれるBeemerたち——みんなをアリーナ、ドームに連れて行くことが恩返しだと思っている、とも。その一歩として来年末にはZeppツアーを発表できるように2022年は思いっきり駆け抜けていくと決意も新たにした彼ら。2年連続で『CDTV ライブ!ライブ!年越しスペシャル!2021→2022』への出演も決定している。この先はもはや前進あるのみだ。“止まれないからByeBye/もう迷子な昨日は終わりな/戻れやしないから”、「BAD THE NIGHT」で歌われたラストのフレーズの余韻がその明るい笑顔に重なった。

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文・本間夕子
写真・Yuto Fukada