Comment

高校生というただでさえ多感な時期に、
あまりにも特別な事情を抱えながら生きる福と宝の心は、いたって平凡だったはずの僕の学生時代に不思議と重なって、脚本を読みながら何度も二人に声をかけてあげたくなりました。

今、精一杯に生きている学生の皆さん、いくつもの卒業を越えても尚、僕と同じように、躓いて踏ん張って生きている社会人の皆さん、そして福と宝の見えない痛みを「わたし」が少しでもほどいてくれたら嬉しいです。

U (THE BEAT GARDEN)

この曲を聴いた時自然と福と宝、そして2人の周りにいる人々の顔が浮かびました。温かく、でもどこか苦しくて、儚い時間でもあり、尊い時間を切り取ったこのドラマにまさにぴったりの曲だと思います。THE BEAT GARDENさんの「わたし」と共に、ドラマを楽しんでいただきたいです。

桜田ひより

今回、THE BEAT GARDENの皆さんと作品の世界観を共有し、打ち合わせを重ねて、主題歌を書き下ろしていただきました。たおやかな感性で、登場人物に寄り添い、心がほどける楽曲にしていただき、大変感謝しております。この楽曲が、「あの子の子ども」のドラマと共に、より多くの人の心に届きますよう、願っています。ぜひ放送を楽しみにしてください。

岡光寛子
(『あの子の子ども』ドラマプロデューサー)

Movie

Interview

“高校生の妊娠”にスポットを当て、第47回講談社漫画賞・少女部門を受賞した同名漫画を原作として、そのセンシティブなテーマ真摯に向き合い、丁寧に作り上げられた話題のドラマ『あの子の子ども』。
そしてドラマにおいても重要な役割を担う主題歌「わたし」を手掛けているのがTHE BEAT GARDENだ。
命とは? 人生とは? そんな途方もなく難しい問いをもまっすぐに受け止め、ドラマに寄り添い、また、聴き手を柔らかい感性で包み込むようにしながら、この深くて温かくて大きなバラード「わたし」を紡ぎあげた3人に、オファーを受けたときの心境や楽曲に込めたそれぞれの想いなど、制作中のエピソードも交えつつ、1万字インタビューで心ゆくまで語ってもらった。さらには『あの子の子ども』の主演を務める桜田ひよりとのコラボレーションも注目のミュージックビデオの見どころや、この先に控える東名阪ツアー“THE BEAT GARDEN one man live tour 2024 「FORTE」”への意気込みにもフォーカス。
じっくりと彼らの言葉を紐解いてほしい。

「この歌詞は違う」ってはっきり言ってもらったのはこれが初めてでした(U)

『あの子の子ども』が本当に素晴らしいドラマで。
U:そうなんですよ。今期最高なんじゃないかと、いちファンとしても胸張ってそう言えるドラマだと思っています。
とても難しいテーマなのに、1話30分と思えないくらいものすごく丁寧に描いていらっしゃって。
考えてみたら「Start Over」から4曲連続でドラマのタイアップが付いているんですよね。
U:本当にありがたいことです。ドキドキします、毎回。
さらに言えば、ここ3曲は立て続けに主題歌ですべてバラード、しかも、どの曲もタイプが全然違うってすごいことだと思うんですよ。
それでいてTHE BEAT GARDENらしさもしっかりあって……対外的にもバラードメイカーとしての認知度と期待度がここにきてメキメキ上がってきている印象があるんですけど、みなさん的にはいかがでしょう。
U:そう言っていただけるのはすごく嬉しいです。でも僕らのなかでは“THE BEAT GARDENらしさ”とか“THE BEAT GARDENならでは”みたいなところは一旦置いておいて、とにかく一作一作、ドラマに寄り添い切るっていうことだけを考えて毎回臨んでいるんですよね。
そうすることが今の僕らの正解だと思っていて。今までにないような新しい曲を作りたいとか、そんなことはまだ考えられないし、きっとこれからも目指すことはしないと思うんです。
それよりもオファーに対してしっかり応えること、ドラマであればしっかり脚本や原作を読み込んで、例えば今回の『あの子の子ども』なら主人公の福(川上 福/演・桜田ひより)と、その恋人である宝(月島 宝/演・細田佳央太)にしっかり寄り添うことが何より大事なので。
ただ、僕らはそう思っているんですけど、曲を聴いてくださった方から「THE BEAT GARDENらしい曲が聴けて嬉しい」ってメッセージをいただいたりもするんですよ。
僕らとしては一作一作、精一杯寄り添おうとしているだけなんですけど、そこにTHE BEAT GARDENを感じてもらえているんだなって、あとから喜びを噛み締めてます。
そんな「わたし」についてたっぷり伺わせてください。
最初にこのオファーを受けたとき、どんな心境でしたか。
REI:もちろんお話をいただけることはすごく光栄なことですし、素直に嬉しかったです。
ただ、高校生の妊娠を描くってすごくセンシティブじゃないですか。
観る人によって捉え方が大きく変わるドラマになるのかもしれないし、そこに僕らの歌がどう関わっていけるのか、責任感を持って取り組まなきゃいけない……いつもそう思っていますけど、今回はより、そういうことは考えました。
あと、何より歌詞が大変だろうなって思いましたね。
Uさんがどういったところまで歌詞にしていくのか、きっといろいろ悩むんだろうなって。
Uさん、どうでした?
U:たしかに歌詞に関しては、今でもまだ考えているくらい、いろんなことを考えましたね。触れてはいけないボーダーラインもあるだろうし、ドラマの主人公が高校生というところで、ちゃんと歌詞にも具体的なスクール感が感じられないと、ありきたりな未来を歌っているだけの曲になってしまうと思ったし。
相当にチャレンジングだったのではないかと想像します。
U:僕らからしたら、きっと今のTHE BEAT GARDENにお話を下さったドラマ制作サイドのみなさんの勇気のほうが大きいと思うんですよ。
期日的にも、もう他の方に頼むことはできないスケジュールで楽曲制作の締切を組んでくださって、言うなれば僕らに懸けてくれてるわけじゃないですか。
もちろんプレッシャーにもなるんですけど、そのヒリヒリ感がないと絶対出てこないメロディと言葉ってたしかにあるっていうのはこれまでにも感じていて。
しかも今回、ものすごく嬉しかったのは、ドラマのプロデューサーさんと監督さんが歌詞について率直な意見をたくさんくださったんですよ。
何度も何度もやり取りして、僕からも質問を投げたりして。
いつもはあまりないことなんですか。
U:ここまで言及していただいたのは初めてでした。「この歌詞は違う」ってはっきり言ってもらったのも初めてでしたし。
この前、直接お会いする機会があったんですけど「ごめんなさい! あんなに何度も何度も」っておっしゃってたんですけど、僕はめちゃくちゃ嬉しくて。
歌詞を書いている期間って孤独でしかないんですよ。泣きたくなるくらい、もうやめたいって言いたくなるくらい、本当に孤独で。
でも、それを言ったら他のことを頑張ってくれているメンバーやスタッフさんに失礼だし、親にもそんなこと言えないし。
そんなときに僕と同じくらい、もしかしたらそれ以上に歌詞をいい方向に持っていこうとしてくれている熱意がプロデューサーさんと監督さんから強く伝わってきたんです。
そのやり取りがなければこの歌詞は生まれなかった?
U:絶対生まれてないです。たしかこれ、4パターン目くらいに書いたものなんですよ。
最初はもっと言葉遊びを入れたりしていたし、一回聴いただけではわからないような言葉もたくさん入っていたんですよね。
どこか捻りたがるというか、そういう僕の癖が出てしまって。
でもプロデューサーさんと監督さんが僕にたくさん意図を伝えてくれたおかげで素直になれたんです。
僕ひとりじゃ絶対こうはなってなかったと思いますね。
では作曲についてはいかがでしょう。
今回はMASATOさんがメロディを手がけたと聞いていますが、そのあたりの経緯を詳しく知りたいです。
U:今回もコンペ式で決めました。
3人それぞれに曲を作ったりして、全部で20〜30曲はあったと思いますね。
そこから最終的に2〜3曲くらいに絞ったものをドラマ制作サイドの方々に聴いていただいて、選ばれたのがMASATOのデモだったんです。
絞った時点で僕たちもこの曲になるだろうなという予感はしていたんですけど。
REI:最初にこのデモを聴いたときに「これがいいんじゃないかな」って話してましたもんね。
ドラマともすごく相性がいいと感じたし。
MASATO:4曲ぐらいデモを作ったうち、この曲がいちばん最初に完成まで持っていけたんですよ。命というテーマに素直に向き合って紡げた、そういう温度感の曲になって。
別パターンとしてもう少しシリアスな曲調で作ったりもしましたけど、結局、別パターンは別パターンでしかなかったというか。
曲を作るにあたってドラマサイドからの要望などはあったんですか。
U:高校生が主人公なので、合唱曲のようなイメージのものがいいというお話はいただいていましたね。
それから、THE BEAT GARDENのスタンスとして、自分たちも多感な時期を経てきたからこそ「大丈夫だよ」と言ってあげられるような温かさを込めてほしいという、大きく言うとその2つがオファーの軸にありました。
MASATO:選んでいただいたときに「やさしさのなかにちゃんと切なさがある」って言ってくださったのがすごくグッときたんです。
やっぱりテーマがテーマなだけに、僕も曲と向き合いながら、すごく悩んでいた時期もあったんですけど、しっかりと向き合った結果、この曲が生まれて、そこに宿ったリアルがちゃんと音楽として届いてるんだなって確信を持てたというか。
デモが完成するまで、どれくらいかかりました?
U:長かったよね? 歌詞まで書いてくれてるんじゃないかって思うぐらい(笑)。
MASATO:僕、めっちゃ時間がかかるんですよ(笑)。
細かいところまで作り続けるのが好きだというのもあるんですけど……僕の友達は「歌詞は絞り出す。メロディは溢れ出す」ってよく言うんです。
でも僕は歌詞を一切書かないので、僕にとってはメロディが絞り出してる作業なんですね。なので、すごく時間がかかってしまって。

単純に自分がこのメロディで歌いたくなったんですよね。実はそれって大事なことかな、と(REI)

ちなみにメロディを作るにあたって最初の取っ掛かりになったのは?
MASATO:サビの折り返し部分ですね。
U:ふた回し目?
MASATO:そう。ふた回し目の折り返し部分がいちばん最初に出てきてくれて、すごくいいなと思いつつ……これをどんな世界観に広げていくのかずっと考えていくなかでAメロの頭が浮かんだんですよ。
しかも同じコード感だったので、自分自身でも辻褄が合ったというか。
そこからできるだけ素直に作っていったんです。
メロの偏差値を上げるというより、もっと本質的な部分が出るといいなと思いながら。
最初にメロが浮かんだのはどんなシチュエーションでしたか。
MASATO:脱衣所でした、お風呂の(笑)。
断片的なメロディは日常のなかでいろいろたくさん録ってるんですけど、あのメロディが録れたのは脱衣所でしたね。
U:へぇ!
前にも、お風呂で曲ができたというお話を伺ったことがあります。
MASATO:そうなんですよ。
お風呂のなかって雑念がないというか、視覚的な情報も少ないですし、考えることに集中できるからかもしれないなって。
REIさんは最初にMASATOさんのデモを初めて聴いて、どんな印象を持たれたんでしょう。
REI:メロディ自体にすごくストーリーがあると感じました。
主人公の葛藤はこのDメロで表現されるのかなとか、そういう想像まで膨らむようなメロディで。あと、単純に自分がこのメロディで歌いたくなったんですよね。
おお!
REI:それってシンプルだけど、実はすごく大事なことなのかなって。
歌いたくなるってことは、つまりいい曲なんだろうなと思ったし、聴いてくれた人も一緒に歌いたくなってくれたら嬉しいなって思えたというか。
その感じ、すごくわかる気がします。
Uさんはどうでした? このメロディに呼ばれて書けた歌詞などはありましたか。
U:ありました。ありました、っていうか……最初にお話した通り、ドラマのテーマがちょっと難しいこともあって歌詞はかなり悩んだんですよ。
とにかく“♪ラララ”でひたすらMASATOのメロディを聴き続けていたんですけど。サビの始まりで“ああ”って歌っているところがあるじゃないですか。
デモのその部分をMASATOは“ララ”って歌ってたんですね。
それを最初に聴いたときに「たった2文字? 無理だよ!」って思っちゃって。
「ふざけんなよ、MASATO!」って(笑)。
MASATO:ははははは! そうなんですよね〜。
U:いつも言ってるんです、僕。
特にサビの頭は言葉のことも考えてくれって。
前回、上村昌弥くんが作曲をしてくれた「present」もサビが2文字始まりだったんですよ。
「あれは苦労したな」っていう話を100億回ぐらいしてたのに、また2文字って喧嘩売ってるのかな?みたいな(笑)。
でも、ずっとデモを繰り返し聴いていて、あるとき“ララ”が“ああ”に変わった瞬間があったんです。
「そうか! MASATO、ごめん。これは合唱曲をイメージして作ってくれたんだもんね」と思って。
今までいろんな歌詞を書いてきたぶん作詞筋肉が付きすぎていて、勝手に言葉を入れなきゃと思い込んでいたけど、素直に“ああ”でいいんだってメロディが気づかせてくれたというか……サビ頭が“ああ”なら合唱曲としても成立するって気づいた瞬間に、すべてがほどけたんですよね。
歌詞カードには載せてないですけど、この“ああ”が出てきてくれたおかげで、そのあとの歌詞を書いていくことができたし。
もし自分でメロディを作っていたら、あの部分は“ああ”にはなっていないでしょうね。
ホントMASATOのメロディが連れてきてくれたんだなって。
MASATO:出てくるまでの経緯は今初めて聞きましたけど(笑)、この“ああ”を聴いたときは僕、ガッツポーズしましたから。
あの2音はすごく大事なポイントになるだろうなと思って作ったんですけど、そこに“ああ”を入れてもらえて、しかも歌詞カードには載ってない。
それってつまり本当の気持ちじゃないですか。このドラマでもそういう描かれ方をしていると思うんですけど、リアルに思っていることって実はそうそう言葉にならないと思うんですよね。
そうしたニュアンスが歌詞カードに載っていないことでも表現することができたし、そのぶん、あとに続く歌詞がすごく心に入ってくる。
そういう大事なものを、勝負しなくちゃいけないあの2音に入れてくれたことに僕は大感動して本当にガッツポーズでした。
REI:僕はやっぱりそのあとの“わたしはわたしを続けてよかった”にグッときましたね。
葛藤と幸せの両方を含みつつ、何より芯の強さを感じさせるフレーズだし、このドラマのいちばん大事なところにもすごくリンクしている気がして、すごくいいな、好きだなって。
U:まさに“ああ”のあと、そこがいちばん最初に出てきてくれたんですよ。
この1行がいてくれたら大丈夫、大事なところは崩さずにいられるなって自分でも思えるフレーズなので、そう言ってもらえて嬉しい。
“わたしはわたしでよかった”とか“わたしはわたしでありたい”という言い回しはよくあるけれど、“続けてよかった”という言葉を持ってきたUさんのセンスが本当に秀逸ですよね。
もしかしたら“やめる”という選択肢もあったのかもしれないと思わせる奥行きだったり……ドラマの5話で主人公の福が産婦人科を受診する場面、そのモノローグで「でも私は私からは逃げられない」というセリフがありましたけど、そうしたある種、追い詰められたような心境から、きっと“続けてよかった”と思えるまでの物語の流れも想起させる寄り添い方が素晴らしいな、と。
それは“わたしはわたしを選んでよかった”も同じで、圧倒的な肯定感があるんですよね。
しかも外野が与える「大丈夫」ではなく、ちゃんと主人公の内側から湧き上がってくる「大丈夫」として描かれているところがさすがだなって。
U:ありがとうございます。実は過去にライブのMCで言ったことがあるそうなんですよ、「(あなたを)続けてくれて、ありがとう」みたいなことを。
僕は全然意識してなかったんですけど、ファンの方からのメッセージでそれを知って。生きづらさみたいなものってきっと誰もが抱えていると思うんです、今の世の中。
それは僕ら3人だって同じで。そうしたなかで、ある種、勇気を持って生きることを選んでここまできて……同じように、THE BEAT GARDENを生きる勇気にしてくれている人もきっといるんだろうなって常に思っているんですよね。
例えばライブとか、もちろん普通に楽しみたくて来てくれてる人もいっぱいいるでしょうけど、本当にこの日がなかったら……みたいな。
そういうことってみんな、どこかで経験しているはずで。
歌を書いていないときもそれは常に意識しているから、こうして出てきてくれたのかもしれない。
命とは何か、人生とは何か、そういう問いかけも感じさせるドラマの主題歌だからこそ、Uさんのなかに常にあるものが滲み出たのでしょうね。
U:ともすれば「上手いこと言うね」で終わってたかもしれないけど、このドラマだからいちばんいい温度感かつMAXの気持ちで歌えたんだとも思いますし。
では、歌唱に関して特に心がけていたことと言うと?
U:これは福の歌でもあるし、宝の歌でもあると思っていて。
なので歌うときもあえて対象を絞らないようにしてました。いつもなら誰かの画像を参考に見たり、具体的な何かをイメージして歌うんですよ。
役作りと言ったら俳優さんに失礼ですけど、そういうものに近いようなやり方で歌っているんですけど、今回は「わたし」というタイトルでありながら、逆にどの“わたし”で歌うのか決めちゃいけないって感覚がすごくあって。
ああ、なるほど。
U:聴いてくれた人が誰ひとり排除されないような、そういう歌い方をしていた気がします。
REI:僕は休符を大事にしようと思いながら歌ってましたね。
休符だけど何もないわけではなくて、むしろしっかりとそこにある感情を、次の歌詞がくるまでに受け取ってほしいなと思うんですよ。
聴いてくれた人の想いとか意志も乗っけながら。
そうやって聴いてもらえたら、よりリンクする部分を感じられるんじゃないかなって。
なので息遣いだったり、そういう部分も今回はいつも以上に意識して歌うようにしていました。
今回は特にREIさんの歌がすごくナチュラルに感じられました。
気持ちはすごく入ってるけど気負いすぎていないというか、心地よいニュートラルさがあって。
REI:そうかもしれないですね。
自分の感情をグッと押し出すというよりは、受け取ってくれた方に委ねてる部分はちょっとあるかも。
MASATO:聴く人が想像できる余白を作りながらREIが歌ってくれたので、僕は逆に作り手として、このメロディの解釈を持ったまま素直に自分のクセが出たらいいなと思って歌えたんですよ。
とは言っても、ある意味、僕は曲を作り切った時点で完全燃焼しちゃってたんですけど(笑)。
REI:してましたね(笑)。
U:MASATOってたぶん憑依型なんですよ。だから曲を作っているときはその期間を作曲家として生きているんです。
だからレコーディングの日も作家さんみたいな顔でスタジオに来やがりまして(一同爆笑)。全然ボーカリストじゃなかったもんね? ブリッジとか最初、まるで歌えてなくて。
MASATO:ホントそう。いざ歌うとなったら「この歌、難しい!」みたいな(笑)。
もちろん自分が曲を作ったときの意図のまま、ちゃんと歌おうとはしていたんですけど、いちいち「今のどうでした?」って確認しながらじゃないとダメで。
U:あんなMASATO、初めてだったよ。それだけこの曲を作ることにすべてを捧げてくれてたってことですけどね。
ホント「歌を歌うの、初めてです」みたいな顔で最初スタジオに入ってきたから(笑)。
面白いな、そういうものなんですね。
U:いやいや、そういうものではないです(笑)。今回のMASATOが特別そうだっただけ。
最後はちゃんと納得いく歌がその日のうちに録れたのでよかったですけど。

3ボーカルとしての強みやTHE BEAT GARDENとは?という問いの答えをもっと突き詰めたい(MASATO)

配信リリースから早くも1ヵ月経ちましたが、反応もたくさん寄せられているでしょう?
U:はい。みんな、フルで聴いてくれてますし、もちろんドラマも観てくれて。
今回、すごく嬉しいのは僕らに送ってくれる感想で「ドラマがいい」っていうものがダントツ多いことなんですよ。
これまでは「いい曲だね」とか「いい場面で流れたね」っていう感想をいっぱいいただいていたんですけど、今回は福や宝の役名を入れてメッセージをもらったり、ドラマにすごく入り込んでくれてることがめちゃくちゃ伝わってきてホント、ミュージシャン冥利に尽きますね。
僕らの曲がドラマの一部になれているということでもあると思うので。
そしてMVでも、とても贅沢なコラボが実現しましたね。
U:そうなんですよ! 「ぜひお願いします」って桜田ひよりさんにオファーさせていただいたら、二つ返事で快諾してくださって。
現場でお会いしたときなんてもう桜田さんの向こうが透けて見えるんじゃないかってくらい透明感がすごかったです。
なのに、ちゃんと普通の高校生に見えるのがさすがだなって。
ちょっとパラレルワールドの福を観ているような感覚に陥りました。
U:そう、この世界線ではこの福がいるのかっていう。
REIが『あの子の子ども』の福とは違う高校生の桜田ひよりさんとして撮影当日は来てくれてたんじゃないかなって言ってたんですけど、まさにその通りの佇まいで。
現場では「本当にいい歌ですよね」って感想をいただきましたし、「今日は高校生になり切って頑張るので」と言って、本当に「わたし」の“わたし”になり切って、撮影を走り切ってくださっていましたね。
ご自身のシーンついてはどうでした?
REI:早朝から、最初にMASATOさん、そのあとに僕、ちょっと空いてお昼のタイミングでUさんっていう順番で撮影したんですけど、リップシーン一発撮りのみ、みたいな。
時間で言ったら5分ぐらいなんですよ。
U:テストと本番、2回フルで撮ったら終わりっていう。
それで十分なくらい、桜田ひよりさんや他の学生役のキャストさんたちによってパワーがある映像になっていて。
MASATO:なんなら僕らのシーンはなくてもいいのにって思うくらい、世界がしっかりできていたんですよ。
現場のモニターで観ながら、どのシーンもカットしたくないなって思うくらい素敵で。
みなさんも違和感なくあの世界の住人として溶け込んでますよ?
U:これもドラマに助けてもらったなって思ったんですけど、主題歌のオファーをいただいたときの「多感な時代を経た今のTHE BEAT GARDENとして“大丈夫だよ”と言ってほしい」っていう言葉が、MVでも僕らの角度として反映されたんですよ。
ファンタジーっぽく聞こえたらイヤなんですけど、この3人としてはちょっと妖精みたいな立ち位置であのなかにいられたらと思っていて。
すでにあの学校にはいない存在、とっくの昔に卒業してるんだけど「大丈夫だよ、なるようになるよ」って見守っているような存在でいられたら、と。
OBみたいな?
U:それだ!(一同爆笑) 
REI:たしかにOB感はすごくある(笑)。
MASATO:妖精じゃなくてOBだったのか、僕たち(笑)。
すみません!(笑)
U:でも、本当にそんな感じですよ。
撮影前、MVの監督さんが「Uさん、どんなスタンスで考えてますか」って聞いてくださったんですけど、そのときに、桜田さんやキャストのみなさんの目には映らない、見守るような立ち位置で臨みたいんですって伝えたら、監督さんも「そうなんですよ、Uさん」って。
そこで監督さんが挙げてくださったのは桑田佳祐さんが主題歌をされていたドラマ『プロポーズ大作戦』のエンディングだったんですよね。
その映像のなかで桑田さんがなさっていたような、まさにその場にいるけどいない妖精みたいな感じでお願いしたかったんです、って。
ばっちりじゃないですか。
MASATO:すごくいいものになりました。
映像もとても綺麗ですし、曲がスッと体に入っていくようなMVになっていると思うので、たくさんの方に観てほしい。
MVもそうですけど、この曲って高校生だけに響くものではないところに凄さがあると思っていて。
むしろ世代を超えて人の心を揺さぶる力を持っていますよね。
U:うわ、嬉しいな。たしかにドラマに寄り添って書きましたけど、高校生のためだけとは僕自身、けっして思っていないので。
大人になって抱える不安も当然あると思いますし、今の自分たちとしても、そういうものもたくさん詰め込んだつもりなんです。
だから今、ライブで「わたし」を歌うのがすごく楽しみなんですよね。
そういうものを丸ごと目の前の人たちに届けられるのが。
10月からは東名阪ツアー“THE BEAT GARDEN one man live tour 2024 「FORTE」”もスタートしますし。
U:東名阪という括りで開催するのが本当に久しぶりで。
10箇所以上の規模で回るツアーだと、ゴールに向かって成長していく姿を観てもらうという側面もあると思うんですよ。
もちろん初日から毎回、どのステージも完成形でありたい気持ちは持っていて、東名阪ツアーの場合はよりそっちのニュアンスが強い気がするんです。
それぞれにしっかりと確立された3公演をお届けするというような。
10月に大阪、11月に名古屋、12月に東京と、開催がマンスリーなのもあるでしょうね。
U:はい。明らかに違ったものを各公演で受け取ってもらえると思うので、初めての方にも今までずっと足を運んでくださっている方にも、新しいTHE BEAT GARDENを感じてもらえたら嬉しいですね。
REI:どの公演でもTHE BEAT GARDENのベストを届けたいですね。
この間、セットリストのミーティングをしたんですけど、「わたし」が入ることでまた今までと見え方が全然違うんだなって自分でも驚いたんですよ。
その時点で僕自身、すでにワクワクできたので、『あの子の子ども』でTHE BEAT GARDEN知ってくれたみなさんにもぜひ来ていただけたら。
絶対、後悔させないライブにしますので。
MASATO:4月に立ったZepp DiverCity(TOKYO)ワンマン公演のステージが僕らにとって新しい大きな起点となって、改めて踏ん切りも覚悟もついたんですよ。
あのZeppからこれまでの期間、ずっと考えていた3ボーカルとしての強みとか、THE BEAT GARDENとは?という問いの答えが「わたし」のなかにもちょっと込められた気はしているんですけど、ツアー当日までにそれをもっと突き詰めて臨みたいと思いますので、楽しみにしていてほしいです。
ツアータイトルは音楽用語の“フォルテ”から?
U:それもありますね。これはみんなとライブを作りたいから付けたタイトルで、みんなと一緒に歌いたい、もっと大きな声で歌っていいからねっていう気持ちを込めたんです。
僕らが歌うのを聴きに来てくれているというのも大前提としてあると思うけど、THE BEAT GARDENのライブはみんなで一緒に合唱してこそもっと楽しい時間になるはずなので。
ぜひ1曲目のAメロからガンガンきてください!